「異常」への志向



サイコスリラーな本はかなり興味があり時折かいつまんでは読んでいる。この「FBI心理分析官」も読書リストに入ってはいたが長い間放置だったので読んだ。
「プロファイリング」の技術によって犯罪者をかなりの高確率で特定できることは、現在ではかなり一般的な事実として浸透していると思う。この本で自分が最も関心を持った点は犯罪者の犯罪を犯すに至った背景。
結局のところ、家庭環境と親の影響といったものが最大の要因なのか。人が人である由縁はやはり社会的な動物であることだが、これは後天的に手に入れるもので、プロセスを間違えれば致命的な欠陥を抱えて生きていかなければならなくなる。他人を受け容れる事ができるか否か。他人を受け容れる事ができなければ他人とトラブルがあると、他人の生命や感情が前提にないが故に他人をモノとして扱う。つまり簡単に殺すこともできてしまう。普通に考えればそれはやはり「異常」なこと。
振り返ってみると、わかってはいつつも「異常」に惹かれる「通常」でしかない自分が存在している。同じ人間でありながらまるで違う惑星に住んでいるような人間はどのような生き物なのかがやはり気になるのだと思う。
犯罪史に名を残す人たちのその行動たるや一気読みしてしまうほど凄絶なものがあったが、読み終わって気づいたのは根本的な部分で一番興味があったのは筆者がこの「異常」とどう相対していたか、ということだったと思う。